こんにちは!宇都宮、東京、オンラインでピアノを指導しています。長尾大志です!
「うちの子、指がふにゃふにゃで」
「先生に丸く丸くって言われるんですけど、どうしても反っちゃって」
レッスンや体験レッスンで、親御さんから本当によく聞く言葉です。先日も、こんな相談を受けました。

「ここが出ないから、出るように弾かせてるんですけど……なんか、かわいそうだなぁって思うんです」
指の付け根の関節が、山のようにぽこっと出ない。だから毎日、出るように練習させている。でも出ない。子どもはつまらなそうにしている。親としては「これでいいのかな」と思っている。
このお話をされたお母さん自身も、実は同じ手の形でした。ご本人はこうおっしゃいました。
「私も幼少期からピアノを弾いているんですけど、治らないですよね。」
自分が変わらないという事は遺伝子を受け継いでいる子どもも治らなそう。もう諦めている。その言葉には、そういう重さがありました。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。その関節が「出る・出ない」は、頑張りの量とは関係がありません。
「山を出す」練習が、うまくいかない理由
いわゆるマムシ指は、指の関節が反り返ってしまう手の形を指す呼び名です。医学の正式名称ではなく、ピアノ教育でよく使われてきた言葉です。
そして多くの場合、こう指導されます。「関節を丸く」「山を作って」「へこませないで」。
親御さんは真面目です。だから家で、毎日それをやらせます。子どもも真面目です。だから一生懸命、山を出そうとします。
しかし、ここが今日いちばんお伝えしたいことです。
見た目の山を作ることと、演奏中に関節を安定させることは、必ずしも同じではありません。
関節の動きやすさや見た目には、骨格、靱帯、関節包などの生まれ持った個人差が影響します。一方で、演奏中に関節を安定させられるかどうかは、筋肉や腱の働き、力を加える方向、身体の使い方にも左右されます。
つまり、目指すべきは、形を作ることではありません!支えられる手になることです。
私はレッスンでこう言うことがあります。
「骨ですよ。なんで上げたら出ると思うんですか」と。
少し乱暴に聞こえるかもしれません。でも、ここを誤解したまま何年も練習すると、お子さんは「できないことを毎日やらされている子」になってしまいます。それがいちばん、もったいない。
先ほどのお母さんに私はこうお伝えしました。「私自身も、その山が出ていない方の手なんですよ。大丈夫です、経験者がここにいます笑」と。
そして、こう続けました。「出そうと思っても出ません。でも、手の中の筋肉が育てば、自然と安定してきます」
そのときお母さんが言われた一言が、今も忘れられません。
「すごい、それは朗報でした」
長年の思い込みが解けた瞬間でした。目指すべきは、形を作ることではありません。支えられる手になることです。この2つは、似ているようでまったく違います。
指が反りやすくなる3つの要素
では、なぜ指は反ってしまうのか。要素を3つに分けて説明します。
要素1:指先を強く握り込んでいる


指を動かす筋肉は、大きく2種類あります。
ひとつは外在筋。ひじから手首までの前腕にある、太い筋肉です。長い腱(けん)を通して指を動かしています。握る、曲げる、といった力仕事の担当です。
もうひとつは内在筋。手のひらの中にすっぽり収まっている、小さな筋肉たちです。
本来、外在筋と内在筋は協力して働きます。外在筋が悪く、内在筋が良いというわけではありません。
ただ、「丸くしなければ」と指先を強く握り込むと、指を曲げる力だけが先行し、鍵盤から返ってくる力に対して関節を安定させにくくなることがあります。
しかし太い筋肉でぐいっと丸めると、力は指先を引っ張る方向にかかります。すると、支える力が育っていない関節は、耐えきれずにへこんだり反ったりします。
「頑張って丸くしようとするほど、反る」という逆転が起きているのです。
以前、ある生徒さんに「指を曲げないでいいですよ」とお伝えしたとき、その方は笑ってこう言いました。「頑張って、もう曲げてました」。頑張り屋さんほど、この罠にはまります。
要素2:手の中の筋肉をうまく使えていない


ここで登場するのが、虫様筋(ちゅうようきん)という手のひらの中の小さな筋肉です。お子さんに説明する必要はまったくありません。親御さんだけ知っておいてください。
この筋肉には、変わった特技があります。指の付け根を曲げながら、指先の関節は伸ばすという、矛盾したような動きができるのです。虫様筋や骨間筋などの手内在筋は、指の付け根を曲げながら、指先側の関節を伸ばす動きに関与しています。外在筋や腱の仕組みと協力しながら、指の姿勢を細かく調整しています。
この働きによって、手の中に橋のようなアーチができます。反らないための支えは、ここから生まれます。
ただし、指が反る理由を、手の中の筋肉だけに限定することはできません。骨格や関節の柔らかさ、打鍵する方向、複数の筋肉の働かせ方などが関係します。
そして、筋肉は使わなければ育ちません。ここは大人の体と何も変わりません。
要素3:関節が崩れたまま反復している
「じゃあハノンをやらせます」と言われることがあります。ここは正直にお伝えしています。
指をたくさん動かせば、指は回るようになります。でも、回るようになった先に、固まるという現象が待っていることがあります。
指を速く動かす練習そのものが悪いわけではありません。
ただ、関節が崩れた状態のまま速さや回数だけを増やしても、安定した支え方を覚える練習にはなりにくいことがあります。
大切なのは、ハノンをするかしないかではなく、どのような身体の使い方で反復しているかです。
「毎日ちゃんと練習しているのに、指の形だけ直らない」
その理由は、たいていここにあります。練習量ではなく、練習の質の問題です。
家でできること、家でやらないほうがいいこと
やらないほうがいいこと
まず、「山を出しなさい」と毎日言うのをやめることをおすすめします。
出ないものを出そうとする時間は、お子さんのピアノを嫌いにする以外の効果がありません。しかもお子さんは、親が困っていることを敏感に感じ取ります。「自分の手はダメなんだ」と思わせてしまうのが、いちばんの損失です。
もうひとつ、他の子の手と比べないこと。
私はレッスンで、子どもにこんな話をします。「先生は他人だからね。体の大きさも手の大きさも違う。日本語だって場所で違うでしょう。ピアノの弾き方も、いろいろあっていいんだよ!」
手の作りは一人ひとり違います。同じ形を目指させること自体が、そもそも無理な設計なのです。
今日、試せる1つのこと
お子さんに、鉛筆を持ってもらってください。
鉛筆を軽く持ち、指先でぎゅっと握り締めずに、手のひらの丸みを保ったまま支えてみてください。
この動きは、手の中の筋肉の働きを感じるきっかけの一つになります。鍵盤の上でも、強く形を作るのではなく、軽く支えられる感覚を探してみてください。実際にこれを子どもの生徒さんに試してもらったとき、「あ、そうそう」という反応が返ってきました。専門用語をひとつも使わずに伝わる、いちばん分かりやすい入り口です。
鍵盤の上でも、その「キュッ」を探してみる。今日はそこまでで十分です。
正直にお伝えしておきます
ただ、この「キュッ」がお子さんの手で本当に正しく起きているのかは、残念ながらご家庭では判断が難しいと思います。
見た目はそっくりでも、中で何が働いているかはまったく別、ということが本当によくあるからです。指先で握りしめているのに、本人も親御さんも「できている」と思っているケースを、私は何度も見てきました。
そして厄介なことに、間違った状態のまま続けると、そのやり方が身体に記憶されてしまいます。あとから直すほうが、ずっと大変になります。
私自身、自分の弾き方を作り直すのに5年かかりました。知識が足りなかったからではありません。自分の手が今どうなっているのかを、自分では分からないからです。子どもならなおさら、自分の手を客観的に見ることはできません。
まとめ
覚えていただきたいのは、1つだけです。
目指すのは「関節の形」ではなく、「支えられる手」です。
お子さんの指が反ってしまうのは、サボっているからでも、才能がないからでもありません。
骨格や関節の柔らかさには個人差があり、さらに筋肉の働かせ方や、鍵盤へ力を伝える方向も関係しています。
だからこそ、全員に同じ手の形を求める必要はありません。目指すのは、見た目の「山」ではなく、その子の手で無理なく鍵盤を支えられることです。
骨格そのものは変わらなくても、筋肉の働き方や身体の使い方を覚えることで、演奏中の関節が安定しやすくなる可能性があります。。そして筋肉は、正しい方向に使えば育ちます。骨の形は変わらなくても、安定してくる。ここに希望があります。
まずは「山を出しなさい」を一度お休みして、鉛筆の「キュッ」から始めてみてください。
そのうえで、もしお子さんの手が今どうなっているか気になるようでしたら、一度その手を見せてください。形を矯正するのではなく、その子の手に合った支えの作り方を一緒に探していきます。
レッスンでお待ちしております。参考にしてみてくださいね。
自分が指導する弾き方は小さなお子さんから大人の方まで、身体に優しく効率的なピアノ奏法を指導しています。
小さな体でも豊かで響きのある音が出せるようになり、これまで技術的な限界を感じていた方も、更なるレベルアップが目指せる方法です!
ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!








