変な手だね」と言われた日のこと
皆さん、こんにちは!
宇都宮・東京・オンラインで、関節を固めずに響きのある音を生み出すためのピアノの弾き方を、身体の使い方から指導している長尾大志です!
「変な手だね」、「なんでその指の形で弾くの?」
ピアノの先生や、ときには周りの人からそう言われた経験、ありませんか?
実は自分も、弾き方を変え始めて2年ほどたった頃。ピアノ協奏曲の伴奏で、ある大学の教授のレッスンについていきました。その時言われた言葉が
「なんでそんな弾き方してるの?」「だからそんな音しか出ないのよ」という言葉でした。
勿論この言葉の裏には、伴奏なんだからもっとしっかりしなさい。というメインの生徒さんへの愛情があっての言葉だったと感じていますが、弾き方を否定されるってとても心が辛くなりますよね…
そして、指が長い。手が大きい。逆に小さい。関節が柔らかすぎる、または硬い。
自分の手の形にコンプレックスを持ちながらピアノを弾いている大人の生徒さんに、私は数えきれないほど出会ってきました。実際に、ある生徒さんは「変な手って言われたけど、私これしか弾かれないんですよ。直せないんですよ」と、長年抱えてきた課題として話してくれたことがあります。
「この手のせいで、私はうまく弾けないんだ」と思い込んでいる方が、驚くほど多いのです。
でも、断言します。手の形のせいで弾けないのではありません。その手に合わない弾き方を教わってきただけなのです。
問題の本質:「一つの型」しか教わらなかった
日本における多くのピアノ教則本や指導法は、ある一つの”標準的な手“(いわゆる卵型)を前提に作られています。指の長さも、手のひらの大きさも、関節の柔らかさも人それぞれ違うのに、教わる型は一種類しかない。これが、問題の本質です。
タチアナ・ニコラーエワという名ピアニストであり、名教師がいました。その方の動画で「私は弾き方を矯正される事はなかった。それよりも音楽についてを深く教わった」とインタビューでお話していた事を思い出します。
勿論弾き方を矯正する必要がなかった。というのが事実だと思いますが、ここで大事なのが正解は1つではないという事。
標準の型に自分の手を無理やり合わせようとすると、当然どこかに無理が出ます。指が長い人が指を丸めて弾こうとすると、関節が余計に窂屈になる。手が小さい人が大きく指を広げようとすると、力任せになる。
「なぜかうまくいかない」という違和感の正体は、あなたの手が悪いのではなく、手の形と弾き方が噛み合っていないというだけのことなのです。
その噛み合わなさが起きる理由、3つ
その噫み合わなさが起きる理由を、身体の仏みからニつ説明します。
原因1:教則本の”正しい形”は、一つの型でしか語られない
多くの教則本は「指を丸めて、卵を持つように」という表現で手の形を説明します。これは一つの目安にはなりますが、万人に当てはまる正解ではありません。大きなメリットといれば、誰でも安定して弾く事が出来る。しかし指の長さや関節の柔らかさが違えば、同じ「丸める」という指示でも、実際にできあがる形はまったく違うものになります。レッスンをしていると、同じ言葉を使っても生徒さん一人一人で実際の手の形は全然違うことに毎回気づかされます。指導する側が「一つの正解」として教えてしまうことが、そもそもの噫み合わなさの出発点です。
原因2:指を丸める弾き方は、腕の太い筋肉に頼りやすい
指を強く丸めて鍵盤を叩くように弾く動きは、前腕にある太い筋肉(外在筋と呼ばれます)を主に使う動きです。この筋肉は、複数の指で筋肉を共有しているため、1本ずつの指を細やかに動かすのはあまり得意ではありません。
ここで関節が人よりも頑丈だった場合、筋肉が固ますぎる前に関節がサポートするので若い時は疲労しにくく、どんな曲でも安定して弾けるようになります。しかし年齢を重ねる事で関節に負荷が生じやすくなり、大きい筋肉のため疲労も早くなる。結果力みやすくなります。
原因3:手のひらの中の小さな筋肉は、指を伸ばした状態でこそ働く
手のひらの中には、虫様筋(ちゅうようきん)という小さな筋肉があります。この筋肉は、指の付け根の関節だけを曲げながら、指先の関節は伸ばしたままにするという、少し特殊な働き方をします。鍵盤の微妙な抵抗を感じ取るセンサーの密度も非常に高く、前腕の筋肉と比べておよそ10倍もの密度であると言われています。つまり鍵盤のわずかな手応えを感じ取る”司令塔”のような役割を担っているのです。
この筋肉がきちんと働くのは、指を大きく丸めた状態ではなく、指先をある程度伸ばした状態のときです。指が長い方や、関節がしっかりしている方ほど、指を伸ばしたままの弾き方のほうが、この筋肉を活かしやすい傾向にあります。つまり「変な手」と言われがちな手の特徴は、実はこの筋肉を活かすのに向いている場合が少なくないのです。
解決の方向性と今日の1アクション
大切なのは、「正しい手の形」を目指すことではありません。自分の手の形に、弾き方のほうを合わせていくという発想の転換です。
私自身も、長く指を丸めて弾く奏法を続けてきて、そこから指を伸ばして弾く奏法に変えるまでに5年かかりました。頭で理解してから、実際に指がその通りに動くようになるまでには、それだけの時間差があります。だからこそ、焬らず、今日できる小さな一歩から始めることをおすすめします。
今日の1アクション
鍵盤の前に座って、指を大きく丸めずに、軽く伸ばしたまま1音だけ弾いてみてください。指先の関節は動かさず、指の付け根の関節だけを曲げて鍵盤に触れる感覚です。無理に力を入れず、指を置くだけで大丈夫です。
やってみると、今まで「丸めなきゃ」と思っていた分の緊張が、少し抜ける感覚があるかもしれません。
ただし、この伸ばし方が本当にあなたの手に合っているか、力の入れ具合が適切かどうかは、鏡や動画だけではなかなか判断がつかないところです。自分では「できているつもり」でも、実際は指先に力が入りすぎている、ということもよくあります。
まとめ
「変な手」と言われた経験は、あなたの手が間違っているのではなく、その手に合わない弾き方を教わってきたというだけのことです。指の長さも、手の大きさも、関節の柔らかさも、すべて弾き方を選ぶための材料になります!
このブログでは、手の中の筋肉の仕組みから、ピアノを弾くときの身体の使い方をこれからもお伝えしていきます。今日ご紹介した1アクションを、ぜひ試してみてくださいね!
もし「自分の手に合った弾き方が、本当にできているか分からない」という方がいらっしゃいましたら、レッスンでお待ちしております。
自分が指導する弾き方は小さなお子さんから大人の方まで、身体に優しく効率的なピアノ奏法を指導しています。
小さな体でも豊かで響きのある音が出せるようになり、これまで技術的な限界を感じていた方も、更なるレベルアップが目指せる方法です!
ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!
