鍵盤って実は重い?脱力に必要な正しい身体の使い方

「難しい曲を弾くと、1曲だけで腕がパンパンになってしまう」

「脱力を意識しているのに、どうしても肩や腕に力が入ってしまう」

こんなお悩みを抱えている方は、決して少なくありません。

「自分の練習量が足りないからだ」

「指が弱いからだ」

だからハノンやツェルニーで指を強くしよう!

・・・

実はこの考えとても危険なんです!

今の弾き方でハノンやツェルニーを弾けば指は強くなるかもしれません。

しかし、「脱力」「手が固まる感覚がない状態で弾く」

この状態からはかけ離れてしまいます!

今回はなぜ危険なのか?

鍵盤の重さに注目しながら解説していきます!

目次

鍵盤の重さは、卵1個分しかない

皆さんは鍵盤の重さを気にしたことありますか?

一般的なグランドピアノの鍵盤の重さ(ダウンウェイト)は、わずか50〜60g前後です。

卵1個分ほどの重さなんです!

ただ鍵盤を降ろすだけなら楽に降ろせますよね?

ここに、多くのピアノ学習者がハマってしまう最大の罠が隠されています。

指だけで弾こうとすると、身体に何が起きるのか

ピアノを演奏するとき、私たちは鍵盤をただそっと降ろすのではありません。

鍵盤を一定のスピードで動かしています。フォルテシモや速いパッセージの瞬間、指先にかかる動的な負荷は、静的な重さの数十倍から、場合によっては数十倍にまで跳ね上がります。

「同じ重さでも、“止まっている時”と“勢いよくぶつかる時”では全然違う」

例えば…10kgのボウリング玉を

  • ただ手の上に置く
  • 上から勢いよく落とされる

では、感じる負荷は全く違いますよね。

静かに持つだけなら支えられても、落下してきた瞬間は“ドンッ”と何十倍もの衝撃になる。

ピアノもこれと似ています。鍵盤をゆっくり押す時は「50gの重さを支える」感覚に近い。

でもフォルテや速いパッセージでは、

「高速で振り下ろした指が、鍵盤の底にぶつかった瞬間のすさまじい衝撃を、指先だけで一瞬に受け止める」

 という状態になる。

だから実際には、鍵盤の重さとは比較にならないほどの負荷が、指先や筋肉、関節にかかっているのです。

この巨大な衝撃を、体幹の連動を使わず「指の力だけ」で押し切ろうとした瞬間

身体は2つの問題を抱えます。

1. 「共収縮」——アクセルとブレーキの同時踏み

指先だけで力任せに押そうとすると、指が内側に丸まって潰れそうになります。脳は危険を察知し、反射的に指を持ち上げる筋肉(伸筋)に急ブレーキをかけます。指を曲げる筋肉(屈筋)と引き合う「共収縮」と呼ばれる状態です。

この「共収縮」というのは身体を安定させるために常に行われています。

しかし、問題なのは「過度に共収縮を起こす」

例えるならば

満員電車の中、急ブレーキや激しい揺れの際につり革をギュッと強く握りしめている瞬間。

あれは「指を曲げる筋肉(屈筋)」をフル稼働させるだけでなく、同時に「腕をガチガチに固めて守ろう」として、反対側にある「指を伸ばす筋肉(伸筋)」や、二の腕、肩周りの筋肉まで同時にすべて100%の力で硬直させています。

ピアノではそこまでではないにしろ指の状態は例えと同じ状態に近づいています。

2. 関節へのダメージ

また、腕がロックされた状態で鍵盤が底に到達することを「底打ち」と言います。

行き場を失った衝撃エネルギーは、バネを失った手首や指の関節に直接跳ね返ります。

これが腱鞘炎や関節の痛みの主な原因です。

硬いものに対して常に力を加えている状態

「練習しすぎて手が痛い」ではなく、「間違った使い方で手が痛い」が正確な表現です。

解決の鍵は「手の中のインナーマッスル」

ここまで関節を固めてしまう事での様々な問題をお話してきました。

では、どうすればいいの?

必要なのは、力を抜こうとダラダラにする「間違った脱力」ではありません。

腕にある伸筋を休ませて、屈筋、そして手の中の内在筋というものを使用します。

この内在筋というのは日常生活だと塩を摘むや小さく繊細な物を持とうとする際に多様されます。

手のひらの内部にある4本の小さなインナーマッスルで、深指屈筋の腱から起始し、伸筋腱膜に繋がるという独特の構造をしています。この筋肉が正しく機能すると、前腕の伸筋(ブレーキ)をオフにしたまま、指の付け根から安定して打鍵できるようになります。

しかし、この筋肉は日常生活で酷使するものではないため筋肉の発達面からみるととても弱いものとなっています。

そのため、自分のレッスンではこの内在筋をトレーニングする時間も取り入れています。

ですが、今すぐ実践出来る方法はありますので簡単にご紹介します。

身体の使い方を変える2つのアプローチ

体幹から指先へ連動させる


指先だけで弾くのをやめ、肩、腕、手首の連動の中に「指を置いていく」感覚を作ります。

肩から指先までは一体となり一緒に鍵盤に指を置いていく感覚です。

特に分かりやすい方法は和音で優しい音を出そうとする時。

指先だけで弾こうとするのではなく腕全体、強いて言うのであれば肩から腕全体を鍵盤に沈めるイメージです。

そうすると力まなくても優しく弱い音を出すことが可能となります。

鍵盤の底を狙うのではなく中間地点を狙う

しっかり音を出そうとするあまり「鍵盤の底」を狙いがちです。

しかし、最初の方でもお話したとおり鍵盤の底に指が当たることで手へのダメージというのは蓄積します。

そもそもピアノというのは底に鍵盤が底に到達した時に音がなるのではなく、その手前でハンマーがリリースされ弦に当たります。なので鍵盤の底を狙っても音の変化というのはありません。

なので、鍵盤の中間がゴールだと思い、そこを狙ってスピードを加える。

そうすることでいつもよりも軽く弾くことができ、手への負担も少なくなる事でしょう

身体の使い方が変わると、何が変わるのか

手の中の筋肉に正しい仕事をさせると、驚くほど身体の余計なロックが外れていきます。

1曲弾ききることは出来るけど腕に無理をさせてる感覚がある。

だんだんと指が回らなくなる。

自分も大学時代までは指をしっかり動かし、第1関節、第2関節が潰れないようにする。

そんな弾き方をしていたので、「腕が痛くなってくる感覚」「指が回らなくなる感覚」

というのは痛いほど分かります。

だからこそ皆さんに学んでほしい。

気合や練習量ではなく、身体の使い方を正しく理解する。それが、ご自身のピアノを自由にする出発点となります!

自分が指導する弾き方は小さなお子さんから大人の方まで、身体に優しく効率的なピアノ奏法を指導しています。

小さな体でも豊かで響きのある音が出せるようになり、これまで技術的な限界を感じていた方も、更なるレベルアップが目指せる方法です!

ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!

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