ピアノの基礎練習はできるのに、曲になると弾けなくなる理由

皆さんこんにちは!

宇都宮・東京・オンラインで、身体の使い方から演奏を見直すピアノレッスンを行っている長尾大志です!

基礎練習ではできる。でも曲に入った瞬間、いつもの弾き方に戻ってしまう。意識しようとすると、今度は曲そのものが弾けなくなる。

こんな経験はありませんか?

先日、大人の生徒さんともお話をしていたのですが、

「やらなきゃいけない動きは基礎では分かる。でも曲になると急に分からなくなるんですよね。」

なぜこうゆう事が起こるのか…

この記事では、この「基礎と曲の間の溝」で何が起きているのか、身体の仕組みからお話しします!

目次

基礎と曲の間に、溝がある

大人になってから弾き方を見直している方の多くが、この溝にぶつかります。

  • 基礎練習では、指の付け根で支える感覚が分かる
  • 片手ずつ、ゆっくりなら、力まずに弾ける
  • でも曲を弾き始めると、気づけば手首も指先も固まっている
  • 曲の中で意識しようとすると、音が止まり、流れが切れる

こうなると、「自分には向いていないのかも」と感じてしまいますよね。

この原因の一つは

基礎で覚えた新しい動きを、いきなり曲全体で使おうとしていることなんです!

問題の本質は「意識の量」

ピアノ以外で考えると分かりやすいと思うのですが、今日までにやらなきゃいけない事が沢山ある。始める前は何となくの道筋が見えているものの、いざ始めてみるとどれから手をつければいいか分からなくなり、結果どれも中途半端な状態になる。

これがピアノの時にも起きていると思ってください!

基礎練習のとき、頭の中にあるのはほぼ一つだけです。

「指の付け根で支える」「手首を固めない」。

その一つに、注意を全部向けられます。

ところが曲になると、同時にこれだけのことがやってきます。

  • 次の音を読む
  • リズムを保つ
  • 強弱をつける
  • 左手と右手を合わせる
  • ペダルを踏む

そこにさらに「付け根で支える」を加えようとすると、頭がいっぱいになります。

レッスンで見ていると、こういうとき、身体はたいてい「一番慣れた動き」に戻ります。

何年もその弾き方で弾いてきたのですから、当然です。

曲で崩れるのは、あなたの身体が「弾くこと」を優先してくれている証拠です!

戻っていく「慣れた動き」の正体

では、慣れた動きとはどんな動きなのでしょうか?

多くの方に共通しているのは、「前腕の筋肉で指を動かし、関節を固めて安定させる」弾き方です。

簡単に言えば、皆さんがピアノを弾く時にイメージする指の状態です!

指は、そもそも完全に独立して動かす事が難しい

手の甲側の外在筋。伸筋と言います。

指を曲げたり伸ばしたりする筋肉の多くは、前腕から腱を伸ばして指につながっています。

これを外在筋(がいざいきん)といいます。

外在筋は、複数の指で筋腹(筋肉の本体)を共有しています。

そのため、一つの指だけを何とか動かそうとして力を入れすぎると、ほかの指や手首まで一緒に固めてしまうことがあります。

「固めて安定させる」とき、手の中で起きていること

指を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が、同時に引っ張り合う。

これを共収縮(きょうしゅうしゅく)といいます。

誤解のないようにお伝えすると、共収縮そのものは悪いものではありません!

鍵盤に触れる一瞬だけ関節を安定させるのは、むしろ関節を守る働きです。

問題になるのは、引っ張り合いが強すぎたり、ずっと続いたりするときです。日常生活でもずっと同じ姿勢で力を入れた状態は固まりやすくなりますよね?

引っ張り合いが必要以上に強かったり、長く続いたりすると、関節の動きも硬くなり、余計な力を使いやすくなります。
私自身は、そうした状態では音も硬くなりやすいと感じています!

付け根の支えは、まだ「新しい動き」

一方で、基礎練習で育てているのは、手のひらの中の小さな筋肉です。

虫様筋(ちゅうようきん)は、指の付け根を曲げながら、指先側の関節を伸ばす働きに関わっています。
また筋肉の状態を感じ取る「筋紡錘」が豊富で、力を強く出すことよりも、細かな動きや感覚の調整に重要な筋肉だと考えられています。

ただし、この筋肉を指先までつなげて使う動きは、多くの大人にとってまだ新しい動きです!

新しい動きは、しばらくは意識しないと出てきません。

ここで大事なのは、付け根の支えは手の中だけで完結するものではないということです。手の中の筋肉が指の付け根を支え、前腕がその働きを下から支える。この二つがつながることで、肩や肘、指の関節まで固め続けなくても音を保てます。

曲の中でこのつながりを全部の音で保とうとするのは、初めての自転車でいきなり大通りを走るようなものです。

新しい動きは、いきなり曲全体には入りません。入り口を小さくすればいいんです!

解決の方向性:曲の「一部分」だけに入れる

先ほどの生徒さんにも、実際にこうお伝えしました。

「全部でやろうとしなくて大丈夫です。一部分だけでも挑戦してみてください!」

曲の中で意識を向ける場所を、ごく一部に絞る。それ以外の場所は、今まで通りに弾いていい。これなら、頭の中にあるのはまた一つだけに戻ります。

基礎練習と同じ状態を、曲の中に小さく作るわけです。

レッスンでは、子ども向けの簡単な曲を使って、基礎の感覚を曲につなぐこともあります。弾くことそのものに注意を取られない曲だからこそ、身体の使い方に集中できるからです!

今日の1アクション

今弾いている曲の中から、1・2小節だけを選んでください。

そこだけ、基礎練習でやっている感覚を入れて弾きます。

残りは、いつも通りで構いません。

選ぶなら、速い場所よりも、ゆったりした一番好きな場所がおすすめです。

好きな場所なら、自然と音をよく聴けますからね!

「全部できたら合格」をやめて、「2小節でできたら合格」にしてみてください。

私自身も、この溝にいた

私自身も、大学を卒業した後に、約5年かけて弾き方を見直しました。

弾き方を変え始めたころは、基礎練習でできたことが曲では全然出てこない。

その繰り返しでした。

正直、以前の弾き方に戻した方が楽だと思ったこともあります。それでも続けられたのは、出したい音があったからです。私には、その弾き方の先に、今までとは違う音の世界があるように聴こえていました。

慣れるまでには、本当に時間がかかりました。

でも今は、これからピアノを弾いていく年月を考えたら、5年は大した長さではないと思っています。安定しない時期があっても、その後に固まらずに弾けるのなら、安いものだと。

曲で崩れる時期は、新しい弾き方が育っている途中の時期です。

まとめ

今日試すのは一つだけ。

今の曲から1・2小節を選んで、そこだけ基礎の感覚で弾いてみてください。

ただ、どの小節から入れると入りやすいかは、曲と、その人の今の弾き方によって変わります。

こんな方は、ぜひ一度ご相談ください!

  • 基礎はできるのに曲で崩れるのは、才能や練習量の問題ではない
  • 曲では同時にやることが多く、身体は慣れた動きに戻りやすい
  • 慣れた動きの多くは、前腕の筋肉に頼り、関節を固め続ける弾き方
  • 新しい動きは、曲の一部分から入れればいい

自分が指導する弾き方は、小さなお子さんから大人の方まで、身体に無理のないピアノ奏法です!


一人ひとりの手や身体に合わせて、豊かで響きのある音を一緒に目指していきます。
これまで技術的な限界を感じていた方にも、別の視点から演奏を見直すきっかけになればと思います!

ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!

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