ピアノの脱力ができない原因は「指で弾こうとする意識」にある

皆さんはこんな言葉をよく聞くようになっていませんか?

「脱力」

ピアノで脱力できない、指に力が入る、練習しても疲れる。だからもっとハノンやチェルニーをいっぱい弾かなきゃ!

それ凄く危険な考えなんです…

そもそも「脱力」出来ない原因の多くは「指で弾こうとする意識」にあります。

この記事では、1回のレッスンで4曲が同時に変わった実例をもとに、腕の重さを使う弾き方を解説します。

目次

ピアノで力んでしまう原因は「指で弾こうとする意識」

ピアノを練習していると、こんなことを考えたことはありませんか。

「もっと指をしっかり動かさないといけない」「指が言うことを聞かない」「練習すれば指が鍛えられる」これは日本のピアノ教育での主流とも感じますが、これが「力み」「弾きにくさ」に繋がってしまいます。

日本で主流での「指で弾く」これは筋肉の構造上負荷をかけやすい弾き方なんです。

そしてピアノを弾く方は基本真面目な方が多い。

もっと弾けるようになりたい!自分の練習が足りないからだ!

という発想になってしまい、負荷をかけやすい弾き方でさらに負荷をかけてしまう。その結果「力み」「弾きにくさ」を悪化させてしまうことに繋がります。

実は皆さんが好きな「ショパン」

ショパンはむしろ真逆の弾き方を推奨しており、指を機械的に動かせるようにするのではなくその指にあった音色を目指すべき。また、鍵盤をしっかり弾こうとする弾き方はだめだ。とも話しています。

そして、自分もその考えに近い弾き方を教えています。

1回のレッスンで4曲が同時に変わった理由(生徒の声)

先日、レッスンを受けてくださっている生徒さんから、こんなメッセージをいただきました。

レッスンで指摘された、左手の人差し指を曲げないで伸ばして下ろすのと、肘や肩あたりも動かす意識で弾く、というのを帰ってからやってみました。

そうしたら、クレメンティのスケール下りの左手がかなりスムーズになりました。また、ノクターン8番も、腕を動かす意識で弾いたら、ジストニアの変な感覚がほぼ感じなくなりました。両方とも、弾く意識で力が入っていたみたいです。力を抜いたら、ジストニアの嫌な感覚がほぼ消えました。

指で弾くというより、腕や肩で弾く感覚なのかな?

カンパネラ弾いてみたら、左手や右手のメロディが繋がって聴こえます!あと、右手の細かくて押せなかった所が、楽に弾けました。最後のオクターブも、弾きやすくなってます!

バラード1番も、左手のジストニアで弾きにくかった違和感が、なくなりました!あれだけ症状が強かったのに、ビックリです!

クレメンティのスケール、ショパンのノクターン8番、リストのカンパネラ、ショパンのバラード1番。練習していた4曲すべてに、変化が起きました。レッスンの翌日のことです。

「指で弾く」という習慣が全身の力みを生んでいた

不思議に思いますか? でも、仕組みがわかると「なるほど」と感じていただけるはずです。

この生徒さんに共通していたのは、「指で弾こうとする」という一つの習慣でした。

指を曲げてしっかり打鍵しよう、指の力で音を出そう、そういう意識で弾いていたとき、身体には何が起きているか。

答えは「全身に無駄な力が入っている」です。

指だけに意識を集中させると、腕や肩は固まります。腕が固まると、その緊張が指にも伝わります。

指を上げ下げする時、筋肉の構造として、「伸筋:指を上に上げようとする筋肉」「屈筋:指を下に下げる筋肉」が使われます。ただ、指を上げ下げするだけなら良いですが、そこに「指の関節を固定する」という動作も入りますよね?

関節を固めるという事は、筋肉をロックしようとする。そこに指の上げ下げの動作をくわえようとする。イメージしただけでも疲れませんか?腕が固まっている状態では、指は単独で過剰な仕事をさせられます。これが、弾きにくさの正体です。

ピアノの「脱力」は「力を抜く」ことではない。正しい意味とは

「脱力して弾く」という言葉。沢山聞きますよね?でも、これを「力を抜く」と解釈してしまうと、鍵盤に指が届かなかったり、音がコントロールできなかったりして、うまくいきません。

自分が伝えているのは、こういうことです。

脱力とは「必要な力だけを使う」こと。

ピアノを弾くためには、当然ながら力は必要です。

問題は「どこに、どれだけの力が入っているか」です。指先に集中させようとした結果、腕も肩も固まっている状態は、力の無駄遣いです。その無駄な力がなくなったとき、はじめて「脱力できた」と言えます。

そしてその「必要な力」というのは指を下げる際に使う「屈筋」そして手の平の中にある「虫様筋」というものになります。

腕の重さを使う弾き方:「打鍵」から「手を下ろす」感覚へ

正直な事を言います。

この必要な力「屈筋」「虫様筋」を意識することはそう簡単ではありません。今回紹介している生徒さんも継続して来られてる方です。

その結果ある1回のレッスンの後に点と点が繋がり「練習していた4曲」すべてに、変化が起きました。

なので今回はすぐに試せる方法を紹介しようと思います。

自分がすすめているのは、「手を降ろす」という感覚です。

肘や肩を使って、腕ごと下ろしていく。指は、その重さを受け止めて鍵盤に伝えるだけ。指が「叩く」のではなく、腕の重みが「乗っていく」イメージです。イメージしてほしいのは「エレベーター」の様。鍵盤に対して均等に力が乗っかっていく事が大事です。

この生徒さんが「腕や肩で弾く感覚なのかな?」と書いてくれましたが、まさにそれです。

ピアノのジストニア・指の痛みで悩んでいる方へ

今回のメッセージのなかで、「ジストニアの変な感覚がほぼ感じなくなりました」という言葉がありました。

フォーカル・ジストニアは、特定の動作において脳が誤ったパターンを学習してしまう状態です。ピアニストにとっては非常に深刻な問題で、「治らないかもしれない」と絶望している方も少なくありません。

ただ、自分が見てきた範囲で言うと、過度な力みや誤った身体の使い方がジストニア症状を悪化させているケースが多くあります。「指だけで弾こうとしていた」という過緊張のパターンを変えることで、脳が別のルートで動作を学び直すきっかけになる。それがこの生徒さんに起きたことだと理解しています。

もちろん、ジストニアの状態や程度は人によって異なります。すべての方に同じ結果が出るわけではありません。ただ、「身体の使い方を見直す」というアプローチは、間違いなく一つの可能性として持っておく価値があると、自分は信じています。

まず、やってみてほしいこと

難しく考えなくていいです。今日から試せることを一つだけ。

弾くとき、指ではなく肘から動かしてみてください。

肘が下がっていくのに合わせて、指は鍵盤に乗っていくだけ。「叩く」のではなく「降ろしていく」感じです。一音でいいので、やってみてください。何か変わる感覚があるとしたら、それがあなたの身体が「これでいい」と言っているサインです。

おわりに

「指が動かない」と感じているとき、多くの場合、指は悪くありません。指を取り囲んでいる環境、つまり腕や肩、体全体の使い方に問題があることがほとんどです。

原因を正しく知ることで、練習の方向が変わります。そして、この生徒さんのように、一つの気づきが複数の問題を一気に解決することがあります。

ピアノは年齢を重ねてからでも、必ず変わります。正しいアプローチを知っているかどうかの差です。

この記事が、弾きにくさで悩んでいるどなたかの助けになれば、うれしいです。

身体の使い方を一緒に見直したい方は、個別レッスンでお話しましょう。

自分が指導する弾き方は小さなお子さんから大人の方まで、身体に優しく効率的なピアノ奏法を指導しています。

小さな体でも豊かで響きのある音が出せるようになり、これまで技術的な限界を感じていた方も、更なるレベルアップが目指せる方法です!

ぜひお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!

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